「葬儀のときにかけてくれ」といわれた音楽をかけ忘れた!

母は生前に「葬儀のときはエルトン・ジョンの音楽をかけてね」といっていて、CDもすでに用意されていました。それは母の青春の音楽だったのです。もちろん音楽を流すことを約束したのですが、それから間もなく母は亡くなってしまいました。
あまりにも急な死の訪れに、残された私と弟は、驚きと悲しみに打ちのめされ、とても母の言い残した音楽のことに思いが及びませんでした。あわただしく葬儀が終わり、自宅に持ち帰った遺骨を前に、ただただ呆然とする中、私はなんとなく何かをし忘れたような妙な気分におそわれました。
弟も同じ気分を感じていたようで、母の遺影の前で二人が目を合わせた瞬間、
「あ!」
母の好きな音楽をかけるのをすっかり忘れていたのでした。 「お母さん、ごめんなさい。……まだ間に合うかしら」
悲しみを一瞬忘れた私たちは、CDデッキのスイッチを入れました。主を失い、ひっそりとした自宅の居間に母の好きだったエルトン・ジョンの歌が静かに流れてきました。!!……遺骨をおさめた壺が少し動いたように見えました。